SIRAKABA HOMEPAGE

ニュージ-ランド研修報告

行 程  9日 女満別より空路にて千歳経由でクライストチャーチへ

              10日 クライストチャーチ到着

              11日 食品加工会社  (農業より転向した食材会社)

        小麦農家    (小麦の多収農家)

        馬鈴薯農家   (玉葱と馬鈴薯を主とした農家)

              12日 野菜農家    (小規模ながら野菜の生産と直売をする農家)

                            アスパラ研究所 (アスパラと馬鈴薯の品種改良)

                            空路ロトルアへ移動

    13日 ロトルアよりオークランドへ陸路移動、農村風景を視察

 14日 野菜農家    (大規模に野菜生産と輸出をする会社)

                            農業研究機関 (日本で言う普及センターと試験場)

               15日 酪農家     (ケンブリッジの酪農家)

                            野菜農家    (ケンブリッジの野菜農家)

        16日 オークランドより空路にて千歳を経由し女満別へ帰着

加工食品会社訪問

フレッシュ・ベジ 

従業員9名の野菜加工と果物販売の会社で、元々は農家のオーナーが9年前に始めた。売り上げは、1億2千500万円との事、全ての野菜は、注文に応じて仕入れ納品するというやり方で、病院、ホテル、レストラン等に納められる。野菜はすぐに料理に使われるようにパックされています。特に高齢化が進んでいるということで老人ホーム等のからの引き合いが多いそうである。近年機械化し従業員は以前より少なくなったが、週に30トン前後を処理する成長企業とのこと。日本では零細業者との感がした。原料に使うジャガイモなどは、カットするということでかなり悪い(罹病芋、青いも、虫食い芋など)原料が使われていた。製品はユーザーごとに袋詰めし、冷蔵して宅配している。ここはクライストチャーチという都市に近いが故に成立する経営かもしれないが、自営にこだわらず新しい業種を模索する視点も、新作物を探すのと同様に大切なことと感じた。

   

      フレッシュ・ベジ             パッキングされた野菜

農場視察

小麦生産農家(ストネーレファーム)

この農場は、ご主人と奥さん息子さんの三人で、経営されており面積は、220ha。小麦(パスタ、ビスケット用)16ha、大麦(飼料用)11ha、白クローバー(採種用でヨーロッパへ輸出)15ha、グリンピース11ha、残りは放牧地で1800頭の羊を飼い、ラム用子羊を年間3000頭出荷するという。灌水によっと収量を伸ばしているが、羊を飼うこととクローバーの栽培で土作りをしている。広い耕地に、羊の放牧、緑肥の導入等で輪作を行い地力が保たれ、肥料や農薬の使用量が極めて少ない事は、コストの面、環境保全から見ても好ましく、我々も一考を要する所である。今年の小麦の生育は、11月にカビの防除1回行っただけで、順調に生育していると喜んでおられました。小麦は、注文により販売したり、フリーマーケットに出すそうです。ここ南島では、近頃羊が安くなった為に変わって大規模な酪農家が増えてきているそうです。

参考

農地の価格は、106万円位、

1トン当たりの価格(1NZドル60円)

ビスケット用小麦、飼料用大麦 15千円 

パスタ用小麦、グリンピース 18千円

小麦f収量11トン、大麦8トン

小麦に対する施肥料 元肥 10アール 10〜12キロ(p18、k20) 追肥 N50

 

      ボブ夫妻と                単収18俵の麦

 

      短稈で太い茎               段数12段、列粒5粒の麦 

馬鈴薯生産農家(クロジアーファーム)

130haの耕地面積にジャガイモ55ha、玉葱18ha、他に輪作用に牧草(緑肥)を栽培している。この農家で生産されるジャガイモは、輸出用に生産され、パッキングは、自分では行わずパッキング工場に出荷後行われています。馬鈴薯はロケットという品種を筆頭にフリージア、レッドラスカルなど9種類栽培しており、生産されたポテトは、70%がフイージ、シンガポール、マレーシア等に輸出される。防除は、2〜3回程度で、反収、早稲で70俵、晩生で110俵との事、ハーベスターは、馬鈴薯と玉葱との汎用型で、掘り取りのアタッチメントを変える事でどちらもこなすことができ、コストが低減されている。収穫時期は、10〜11月、5〜6月とに分け、遅く収穫するポテトは、圃場に畝のまま土中貯蔵するそうです。施肥量 10アール40キロ(N15,P10K10

玉葱は9月末に播種したものが、40cmほどの丈になっていた。直播きで、1ha当たり2キロの種子(1キロ6千円)を播種し、直後に除草剤を散布するほか、年12回の防除をする。玉葱の玉は日本の様に大玉指向ではなく、4.5〜6.0cm程度を目標に密植栽培をしていた。収量は、10a当り5〜5、5トンで、価格は、1トン1万8千〜2万4千円位であるが、昨年は1万8千円、その前の年は、6千円と価格が不安定で困るとのこと。労働力は、1人の常雇用のほか、収穫時期には、4人程雇用するそうです。

 

               直播で播種され、生育中の玉葱

 

 生育中のジャガイモ           玉葱・馬鈴薯兼用ハーベスター 

野菜農家(南島)(フイル・キアノウースキーファーム)

クライストチャーチ中心部から約20分程の距離にあり、耕作面積12ha程の野菜農家を尋ねました。作目は多岐にわたり、トウモロコシ、カリフラワー、ブロッコリー、レタス、キャベツ、トマト、シルバービート、グリンピース、人参、馬鈴薯、ラデッシュ、カボチャ等を栽培しています。主にプラグ苗を購入し作付けしているが、販売は市場と直売。

敷地内に直売所をもち、6人の店員で1800万円を売り上げている。1日に数百人

のお客があり、視察中も多くの消費者が訪れ、地域に定着している姿がうかがえた。

この農家で使っている農機具は古いものばかりで、農機具庫等も、丸太に波トタンという、決して立派なものとは思えないものばかりで、コストを抑えていることを実感しました。

 

              農場の一角に展開する店舗

大規模野菜農家(北島)(ワイ・シン)

オークランドより1時間、この農家は、およそ50年前中国から移民してきた人によって始められ現在3代目。野菜のみならず果物の生産や他の農園から買い取った野菜、果物の加工から輸出にいたるまで幅広くビジネスを展開しています。200haの所有地と600haのリースによる農地を耕作し、合計800haの売上が、全体の15〜20%と言うから、輸出業者と言ってもよい。人参を70ha作付けしている他、玉葱、かぼちゃ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー果物など多種の作物を栽培している。従業員は、通常30名程で、繁忙期には、このパッキングする社員が、マオリ系の人、またトンガなどから毎年熟練した同じ人達を連れてきてくれるそうである。多いときには200人ほどになるそうである。生産された農産物は、ローカルのマーケット、や海外に輸出している。特にカボチャの90%は、日本に輸出され人参、玉葱等の海外輸出は、この会社から直接日本に向け行っている。玉葱は輸出国別に規格を分け、大玉は米国に、中玉を日本に、小玉は欧州とニーズに合わせ出荷をしている。ニュージーランドのニーズとしては、特に規格にこだわらないようだ玉葱の選果設備や社屋など、社員自らが工夫して作るなど、随所にコストダウンの努力がみられた。また、この農場からクレードル食品にカボチャが納入されていたことは、この会社が美幌農業のライバルであることと、改めて認識するものだった。

この農場は、クライストチャーチで見てきた農家と同じように生産から販売まで行っている点は、似ていますが規模は、桁違いに大きい企業的な農家である。

 

人参の選別作業             玉葱のネット詰め

今回の海外研修を計画する中で、ケンブリッジが美幌の姉妹都市でもあり、同市を訪れたいという希望があり、2戸の農家の視察を計画し、訪問する事となった。時間の関係で街並みを見て廻る事が出来なかった事が残念であった。

ケンブリッジ地区酪農家視察(フオーントン農場)

100ha以上の草地で、130頭のフリージアン種の乳牛を飼う酪農家で、他に羊も180頭ほど飼育している。通年放牧をしており、28のパドックを12日間隔で移動し、冬期間のみ貯蔵サイレージを与えている。サイレージのラッピングは業者に1個1500円ほどで委託し、施設や機械にあまり経費をかけていない。ミルキングパーラーも簡素なもので、恵まれた気候条件をフルに生かしていた。 全牛をホルモン剤にて一斉に発情させ人工授精しており、不受胎牛は種牛による本交で受胎させる方法を用い、搾乳ステージを揃えることで合理化している。この様なシステムなので、乾乳期間は乳業工場も休むというから驚きである。受胎率は、人工授精で75%、本交で12%、不妊牛13%は肉用にされる。平均寿命10才で8回の分娩だが、蹄間腐乱と乳房炎が主要な疾病とのこと。乳量は、4千キロと低いようである。

生産される牛乳は、ほとんどが乳製品として加工され、ニュージーランドの主要な輸出品となっいる。また取引は、成分による仮払いシステムで、市況が農家収入に速反映される。 農場は60と61才の夫妻で営まれ、ファームステイもしており、全体としてゆとりが感じられた。後継者は決まっていないが、息子が継ぐなら農場を順次売却して引き継ぐとの考えで、日本の世襲の感覚は全くなかた。

 

 

     ミルキングパーラー                 放牧風景

ケンブリッジ地区野菜農家(マーチンホフマン農園)

約20haの野菜畑を耕作するマーチン・ホフマン氏は40才。人参・アスパラ・パースナップ・ビートルーツ・シルバービート・梨など、30種類の野菜を作っている。夫妻の他3名の従業員で1800万円の売上、300万円の所得があると言う。野菜の苗はプラグ苗で1本4円ほど、野菜の生育や価格は当たりはずれがあり、雑草と競合した部分もある。出荷は地元レストランやマーケットにも出すが、60%は20kmほどの都市ハミルトンの仲買業者に出荷している。ちなみに手数料は8%とのことだが、取扱量によって上下するとのこと。最近は、各野菜の価格低迷から、梨に作付けの重点を移しているとのこと、自らの梨に大きなプライドを持っているのが印象的だった。また、害虫対策に選択制の農薬を用いたIPM(総合的害虫管理)というシステムを導入して、食品の安全管理を心がけていることは、今後の農業の課題とも感じた。

   
        ホフマン農園                 期待のかけられている梨 

 

研究機関訪問

アスパラ研究所 ASPARA PACIFIC LTD

1990年設立、主にアスパラガスの品種改良をする研究機関で、馬鈴薯の品種改良も手がけている。開発されたアスパラの新品種は、日本にも販売されている。国の補助の他、民間企業の委託研究や、種苗・生アスパラの販売で運営されている。

 この施設で開発されたパープルアスパラガスは、火をまったく通さない生食用で、サラダなどに使われるとのこと。実際に食べてみても生臭さはなかった。弱点として熱を加えると変色するとのことだが、日本では2箇所ほどしか作付けされておらず、販路が確保できれば美幌での新しい取り組みの可能性を感じた。 ニュージーランドで生産されたアスパラは、73%は豪州へ、10%が米国へ、9%が日本へと生や缶詰で輸出されている。7〜1月がシーズンだが、ビニールハウスを用いての栽培も試みられているとのことである。4haの研究用農地を持ち、10年の実績を元に農家のコンサルテングも手がけている。赤アスパラ、黒アスパラ等、色のついたアスパラも研究、60種類のアスパラをつくっているが、67年かけ新種ができ市場流通させるまでには、15年位かかるとのことです。

     

圃場で説明を受ける              アスパラ研究所

農業研究所

日本で言う普及センターと農業試験場を合わせたような機関で、国から70%の補助があるほか、農業関係の商社や農家の寄付によって運営されている。全国に16箇所ある機関のひとつで、安全で環境の維持に役立つ食品の開発を研究している。

農家は1日3万円以上の費用で直接技術指導を受けられるが、多くは農業資材会社を通じて技術情報を得ている様である。無論、農業資材会社は有料でこの機関と提携し技術を得ているのだが・・・。この機関では最近、マスタードやオーツといった緑肥作物を休閑緑肥として普及を勧めているとのことであった。日本では農業に対する補助・保護が見直される傾向にあり、今後の普及センターや農業試験場もニュージーランドの様になることも想定し、それなりの取り組みが必要と感じた。

 

      農業研究所                丘から望む試験圃場

街のスーパー拝見

スーパーマーケットやコンビニエンスストアーも視察したが、スーパーにある農産物の品揃えに日本との明確な違いがあった。それは、日本ほど高品質な規格に統一されてないことだ。馬鈴薯は、日本で言う外品もあれば傷物もあり、泥付きも大手を振って流通していた。また、玉葱は外品にも当たらない品質の物が、消費者から認められているのだ。日本の消費者と生産者の価値観、市場のシステムに疑問が残った。

  

 スーパーの野菜売り場              農業資材店舗 

研修を終えて

@ニュージーランド農業は国政による保護・補助は無く、民営化された一部の研究機関等にわずかな補助があるのみである。今後、日本でもこの方向に進むことが考えられ、視察した我々の意識面で特に勉強になった。

A農家の経営意識は、保護・補助がないだけに高いと見受けられ、ファームステイや農家レストランへの取り組みが旺盛である。また、他産業への業種転換も選択肢として認識している。更に、農地等の世襲意識が無く、個人の独立意識の強いことも感じられた。新規就農者の受入などを考えるとき、その様な視点も大切な事と思う。

B有畜農業が盛んで、牧草の作付けあるいは休閑緑肥の栽培もあいまって、非常に肥沃な土地が形成されている。結果として農薬や肥料の使用量が極端に少なく、コストが低減されている。また、農地の広いことが前述を可能にしており、美幌の農地の現状とはかけ離れた実態だが、今後は農地の流動化の進み方によっては、その様な可能性もあると考えらる。

C前項を農業に反映する身近な取り組みは、輪作と有機物の大量投入であり、JA運営においても積極的に取り組む課題ではなかろうか。

D農業機械は、古い物が大切に使われていると同時に過剰な保有はなく、外注による作業など、結果的にコストダウンが図られている。我々も一考を要する点である。

平成14年1月9日から16日までニュージーランドの農業視察研修に参加しました。